文献の引用方法について

 以前、拙記事
著作権保護について〜あれもダメ、これもダメと言うのも、どうなの?
2016年12月09日
http://bojoken.seesaa.net/article/444729648.html

に書きましたけど、最近出版された書籍における引用の方法で、ちょっとこれはないなー、という印象を持ったので、改めて確認してメモしておくことにします。
 対象の書籍は、北大路書房の「生理心理学と精神生理学 第Ⅰ巻 基礎」です。

 当ブログ記事
生理心理学の新しい教科書キター!
http://bojoken.seesaa.net/article/450436964.html

で取り上げた問題の掘り下げ。多分随所に同様の問題が発生しているのではないかと懸念しますが、とりあえず斜め読みで読んで気がついた、9章2節のうちp.177-178について。

 どんな点が「ないなー」と思ったかというと、引用した元の文献が何であるかを明示してはいるのですが、どの範囲がその文献からの引用なのかがはっきりしないのです。
 えーっ、こんなテキトーがまかり通るんでしたっけ? ってか、仮に社会通念上やら法律上やら許されるとしても、どこからどこまでがまとめ人の主張で、どこからどこまでが元の文献を書いた人の主張なのかわからないような書き方をされると、原典を舐めるように読んでそれらを峻別しないと次の引用ができなくなってしまっているわけですから、ぼじょ犬は結構困るんですけど…。なので、ぼじょ犬は当ブログでは、blockquoteタグを積極的に使っています。まあ、確かに、引用が入れ子になっている時とか、複数の出典からの引用が入り乱れるときは、かえって鬱陶しく読みづらくなるんですけどね…

 さて、上記拙記事では、
●リクナビNEXTジャーナル
2016-03-30
【まとめサイトの画像転載は違法?合法?】著作権のプロに聞く「コンテンツの守り方と使い方」
http://next.rikunabi.com/journal/entry/20160330
を参照し、「駒沢公園行政書士事務所の大塚大氏」の話がとてもわかりやすかったことを紹介しました。
 で、拙記事でまとめた部分(ただし当該記事に書いたとおり、大塚先生のほとんど丸写し)から引用すると
・ 引用の要件を満たせば、場合によっては、著作物全部を利用することも可能。大まかに言えば、以下のような視点からの判断となる。
 ・必要不可欠
 ・必要な範囲内
 ・出典明示
 ・使うものと使われるものの区別


ってなことでした。
 そうだよね。
 ただ、じゃあ具体的にどうすればいいか。例示してくれているところがないか探してみました。
(横着してリスト表示のソースをコピペしたらレイアウトが崩れているのは平にご容赦)
検索:文献 引用の範囲を明示
●一般社団法人 情報処理学会
ホーム > よくある質問 > 著作権に関するよくある質問
http://www.ipsj.or.jp/faq/chosakuken-faq.html
引用について教えてください。

著作権法では、著作権者に許諾を得ることなく、公表された著作物を利用することができるいくつかの例外を定めています。
引用はその 1つですが、次の要件を満たすことが必要です。
著作権法では、著作権者に許諾を得ることなく、公表された著作物を利用することができるいくつかの例外を定めています。

引用はその 1つですが、次の要件を満たすことが必要です。



  • 引用して利用できる著作物は、公表されたものでなければならない。

  • 公正な慣行に合致した引用、たとえば論文において自分の説を正当づけるためなどの必要性がなければならない。

  • 正当な範囲内の引用でなければならない。正当な範囲とは、次のような場合である。

    • 引用する個所がかぎかっこなどで明瞭に区別できること、

    • 自分の論文が主であり引用が従であること、



  • 引用元の著作者人格権を侵害しないこと。

  • 出所の明示をしなければならない。論文の場合であれば引用個所に注をつけ、近いところに著作者名、書名(題名)、雑誌名、ページを表示する必要がある。参考文献で参照しても、本文中の引用個所が特定できないときは、適法な引用とはいえない。


 ほら、ね。「引用する個所がかぎかっこなどで明瞭に区別できること」って書いてあるじゃないですか。

●一般社団法人 日本医書出版協会
引用と転載について 著作物を利用する上でのご注意

(1)引用に際して著作権法上遵守しなければならない点 ― トラブルにならないために



著作権法では、「公正な慣行」と「目的上正当な範囲」について、具体的に示されていませんが、判例によって適法性に関する具体的な判断要件が示されています。また、同一性の保持(著作権法第20条)や出所の明示(著作権法第48条)も遵守すべき点であり、さらに、著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなされます(著作権法第113条6項)。これらを整理し、引用に際して著作権法上遵守しなければならない点を次に掲げます。




  • 1.

    すでに公表された著作物であること。

    引用は公表されている著作物に適用されます。出版などによる発行はもちろん、ホームページでの公開も、一般的には「公表」に含まれます。


  • 2.

    引用する「必然性」があること。

    自説の補強・展開、学説の批評などの目的のため、他人の著作物を使用する必然性がなければなりません。


  • 3.

    引用部分が明瞭に区分されていること。

    自分の著作部分と引用する著作部分を明瞭に区分することが必要です。区分の方法は、「 」でくくるとか、引用文の前後を1行あける、1字下げにするなど、自分の著作物と誤認させないよう、体裁上の区分をしなければなりません。


  • 4.

    引用部分とそれ以外の部分に「主従関係」があること。

    自分の著作部分が“主”であり、引用する著作部分は“従”という関係でなければなりません。量だけで判断されるものではありませんが、トラブルをさけるためには、引用して使用する分量は必要最小限にとどめてください。


  • 5.

    原則として、原形を保持して掲載すること。

    著作者には同一性保持権がありますので、同一性つまり原形を保持することが必要です。


  • 6.

    原著者の名誉や声望を害したり、原著者の意図に反した使用をしないこと。

    原著者が既に訂正・補足した著作物があるにもかかわらず、訂正前のまま引用したり、あるいは引用して批評すると、原著者の名誉や声望を害した利用となる可能性があります。


  • 7.

    出所(出典)を明示すること。

    出所明示は、引用した部分のなるべく近くにすることが原則です(明示方法等については後述)。巻頭や巻末に参考文献として掲げただけでは、引用部分と出所との関連が不明確なので、出所明示とは認められない場合があります。

 ほらー、やっぱり「「 」でくくるとか、引用文の前後を1行あける、1字下げにするなど」って書いてあるじゃないですか。

 あ、さらに、「規準化」が「基準化」になっている点は、「同一性つまり原形を保持することが必要」っていう部分を守っていないことになりそう。単なる誤変換かな、というレベルかもしれませんが、松村先生は他の文献にも「基準化」と書いてある。「規準」より「基準」が一般的で正しい漢字だという信念がおありなのかもしれませんが、それであっても、原典から変更するのであれば、その経緯を明示して欲しいと思うのは間違いでしょうか? あと、「脈波容積」と「容積脈波」というふうに、専門用語の語順が入れ替わっているものも、原型を保持していませんね。

 よし、北大路書房に問い合わせだ。

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